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事業仕分けの波が能楽にも

 私達は年に何度も、「学校公演」をします。その中には、文化庁の「本物の舞台芸術体験事業」という制度を利用したものがあります。

 学校側からの要望をうけ、あらかじめこの事業に参加することを承認された実演家が出向きます。費用は文化庁側からでるので、とくに都市部から離れた地方・山間地などの学校へ行くことが多くあります。間近で本物の舞台芸術に接する機会のなかなかない子供達に会って、生徒にも先生にも、喜ばれていることを実感できる公演です。

 「体験事業」というところがミソで、必ずワークショップを取り入れて、一層身近に楽しんでもらえるようにしてある、文化庁ならではの企画です。対して、ワークショップのない公演だけのものでは、子供たちにとっては「見せられている感」が強く、かなり反応が違います。最初は硬かった子供達も、ワークショップをすることで、俄然舞台への興味が深まり、私達にも馴染んでくれて、帰りには手を振って見送ってくれたりするのです。いつも、この制度があってつくづくよかったとおもいながら帰ります。

 ところがこの事業が、事業仕分けで「廃止」といわれているのだそうです。

 こんなに喜ばれているのだから、まさかそんな話はないはずと信じていたので、間違いではないかと疑いましたが、ほんとうです。

 廃止の主張はおおよそ、「そういうことは地方でやるべき」ということようです。(それ以前に「まず見直しありき」のようにも思えますが。)

 地方・学校の環境の違いを超えて、同質な本物の舞台芸術を提供できるのは、文化庁の事業だからのこと。地元のちょっと何かできる大人が、ボランティアで学校で演じたりするのとは、迫力も見せ方もちがいます。また教師の指導で、こども達が練習をして発表会をするのとは、意味合いも異なります。

 地方でこのような事業ができるでしょうか。都市では毎日のようにコンサートや演劇やを見ることができます。地方にはホールはあっても箱物としての存在です。その地方まるごと、県まるごとが、本物の舞台芸術になじみのないところはいくらもあるのです。そのようなところで、さらに手を伸ばしても届かない小規模校にまで、都市部の実演家を送り込むような事業を、地方任せにしてできるのでしょうか。いよいよ都市のある都府県と、そうでない地方の差は広がるでしょう。

 国は「地方にやらせろ」。地方ではさらに「市町村や学校単位がやるべきだ」と、下へ下へまわされるのも必至で、結局犠牲になるのは子供たち、ということです。私はこの事業がなくても狂言をやっていくことはできますから、それについて危機感はありません。ただ待ち望んでいる学校が心配です。すでに文化庁側では来年度の要望も受け付けていたのです。

 どんなものでしょう。いま、とくにこの事業に携わってきた実演家の間では、騒ぎになっています。ご覧になる皆さんの声も、あちらに届いてほしい、と願います。

クリスマスカザリ

クリスマスカザリ
私の教えてゐるカルチャースクールの駅前
老若男女、携帯電話で撮影。私も。

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