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松楪

月末の名古屋能楽堂での《やるまい会》。ありがたいことに早くから完売キャンセル待ちだとか。おいでになれなかった方には申し訳ありませんが。
よろしかったら、番組は異なりますが秋の東京公演においでください。そしてチケットお申し込みは私まで。

今度の名古屋公演は稀曲珍曲ぞろい。私は『松楪』という曲を又三郎氏と勤めます。どちらかというと珍曲でしょうか。年貢を納め、歌を求められて詠み、難題を出されて解決し、舞いおさめる。いずれも「めでたく」しおおせるというものです。

じつは先日、他人の不幸について考え込み、気分が鬱々とした日が続くことがあり、そのなかで「人はアカの他人の不幸にもそれなりに共感できるけれど、アカの他人の幸福にはほとんど共感できないのではないか」などと考えていました。

ですが、そんなことを言っていては『松楪』のような曲は成り立ちません。それでも共感してもらわなければならないのです。
それには、物語の設定を理屈で追って、登場人物の幸福の事例について観客に共感…なんてことではなく、登場人物のめでたい気分を分かち合えたらよいのでしょう。極端な例ですが、しばらく前まで正月のテレビに欠かせなかった、海老一染之助染太郎兄弟のように。

年貢を納める設定の狂言はいくつかありますが、『佐渡狐』を除いてはほとんどがあまり上演されない曲といってもよいと思います。理由を有り体に言うと、「あまり面白くないから」。ではどうしてそんな話がいくつもあるのですか。年貢を納めるめでたさが現代では理解しにくくなっているから?
いやいや、私が思うには、海老一兄弟のようなパワーが狂言にも昔はあったのに、無くなってしまったからだと思います。
あのように賑やかにやるわけにもいきませんが、屈託なく明るく演じられたらいいなと考えています。



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